All I need is one sun

日常を日常らしくするためのライティング。

無知

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幼い頃は、自分が信じているものや信念の範疇にあるものしか見ようとしてこなかったように思う。

 

レーガン大統領顔負けのアメリカン・ドリームに侵食された私の脳内は、信じていれば必ず成功すると信じ切っていた。世の中の不条理や、やるせない喪失感や虚無を感じさせるようなものはあえて目を向けてこなかったのだ。

 

具体的な作品名をあげるとするならば、好きな映画は『キューティブロンド』、『プラダを着た悪魔』、『ブリジットジョーンズの日記』で、ドラマ『Glee』にハマり、各シーズンを最低でも5回は見返すような女子高校生で、好きな漫画は『弱虫ペダル』だった。

 

そんな私もいつしか歳を取り、大学を卒業して都内の会社に就職をした。

 

なんでもない仕事を毎日8時間こなしながら、週末を迎える毎日にいつからか明日が来ることに喜びを見出せなくなっていた。

 

昔は毎日がキラキラと輝いていて、お気に入りの通学バックの中のレギュラーメンバーだった分厚い手帳には、1ヶ月のスケジュールがぎっしりと詰まっていて、カラフルなペンでカレンダー一面が彩られていた。

 

今日が終わるのが悲しくて、明日がやってくることが待ち遠しくて。

 

声をあげて笑い、喉が枯れるまで泣いたあの日々のようにはもういかないことはわかっていた。

 

世間や会社が何を言おうが、私は確実に歳を取ったのだ。人生の老化だと確信した。

 

まちがどれだけ汚いか、社会がどれだけロクでもないか、人がどこまで醜い生き物なのか。全てをわかってきたからこそ、そういう事実をテーマにするような作品を面白いと感じて見るようになった。

 

くそったれな世の中だな、と心の中で何度も吐き捨てながらタバコを吸う時間の大切さも分かるようになった。

 

昔の私は幼く、可愛く、キラキラと輝いていて、そして誰よりも無知だった。

 

今の私は、その時よりかは大人で、可愛くなくて、荒んでいて、そして前よりも幸せだと思った。